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症例X

早稲田通り心のクリニック院長・小栗康平による,USPTの入門書。間口は広く,内容は奥深いと評判です。USPT開発の経緯,憑依霊と精神医学との関係,内在性解離(潜在意識下人格)の理論解説,豊富な症例呈示による人格統合の過程,USPTによる過去世療法・未来世療法など,内容は多岐にわたっています。
より簡便で効果の高い解離性障害の治療を目指して

はじめに - なぜUSPTが必要なのか?

 もしもあなたが精神科の研修医なら,指導医に訊ねてみるとよいでしょう。
 先生は,どのように解離性障害を治すのですか?と。
 (DSM-5でいうなら,解離性同一症,解離性健忘,離人感・現実感消失症,他の特定される解離性障害,特定不能の解離性障害)

 それに対して,指導医が明確な答えを提示してくれるなら,あなたにUSPTは必要ないと思います。指導医に教わったり,指導医が紹介してくれた書籍や論文を読むなどして学びを深め,ぜひとも解離性障害の治療に邁進してください。

 そうではなく,指導医に「解離は治りにくいんだよね~」とか「トラウマが関与していれば,EMDRやプロロングド・エクスポージャーもあるけど…」などと濁されてしまったり,「多重人格というのは,医原性疾患か,さもなくば詐病だよ」と言われて納得がいかないようなら,あなたにとってUSPTは,解離性障害を治療する強力なパートナーとなる可能性を秘めていますので,このホームページをくまなく読むことをお勧めします。

 さらには勿論のこと,解離性障害のよりよい治療法を模索している,多くの熱意ある精神科医,および臨床心理士の方々すべてに,USPTを知ってほしいと願います。

潜在意識下人格とは?

 人間の意識は,10%の表面意識と,90%の潜在意識から成るとされています。
 潜在意識部分には,『記憶・感覚・感情のかたまり』が人格(のようなもの)として複数存在しています。それを,ここでは潜在意識下人格と呼ぶことにしましょう。

 Aさんという成人女性を例に話を進めます。
 Aさんが4歳のときに弟が生まれ,忙しい母親に甘えようとしたら,怒られてしまったとき。そのとき,Aさんの心の中で潜在意識下人格(『4歳のAちゃん』と呼びます)をつくり,悲しい感情を『4歳のAちゃん』に背負わせることで,表面意識のAさんは悲しい感情を感じずにすみます。
 記憶・感情・感覚(怒られた体験,悲しい気持ち,そのときに見た夕日の物憂げな色彩や,抱いていたぬいぐるみの肌触り,去来する胸部狭窄感)などの情報も『4歳のAちゃん』が引き受け,それが表面意識にのぼることは通常はありません。

 同じ調子で,
・ 7歳のときに弟のわがままに付き合わされ,自分の感情を麻痺させ我慢した体験を請け負ってくれる『7歳のAちゃん』
・ 11歳のときに授業中に先生にからかわれた際に生じた腹立たしい感情を引き受けてくれる,『11歳のAさん』
・ 15歳のときに親友に裏切られた際の虚無感を背負ってくれる,『15歳のAさん』
 …などの潜在意識下人格を複数つくりあげていきます(100以上つくることも,珍しくありません)。辛い感情に直面しなくてもすむので,短期的にはこの対処法はメリットがあるでしょう。

 しかしこれらの人格は,表面意識にのぼらないだけで,潜在意識下にとどまり続けるので,いつまでも未解決のまま,つらい記憶・感情・感覚が残ってしまいます。すると,心の軸が定まらなくなり,通常なら耐えられるレベルのストレスがしのげなくなってしまうのです。

壺に閉じ込められた辛い記憶・感覚・感情のかたまり

 ここまで読まれて,「これ(潜在意識下人格をつくる解離)って,解離性障害の人だけでなく,うつ病の人や不安障害の人にも割とよくあることなのでは?もっと言えば,普通に日常生活を送っている人の中にも,こういう人は決して少なくないのでは? 」と感じた人もいるかもしれません。
 そのとおりです。決して珍しくない病態であり,辛い出来事に対処するため,様々な人が無意識に実行しています。潜在意識下人格という呼称が大袈裟に感じるなら,『壺に閉じ込められた 辛い記憶・感覚・感情のかたまり』と思えばイメージしやすいかもしれません。
 問題は,その壺の中身の,辛さの程度です。PTSD級の強いストレスを受けるなどしたのちに,解離を繰り返すようになり,治療が必要になったレベルの人に,どのような治療を施せるかが重要です。USPT(タッピングによる潜在意識下人格の統合法)は,決して万能ではありませんが,比較的簡便で,短期間のうちに効果が表れる治療法です。

 両側刺激のタッピングをしてクライエントを変性意識状態に導いて,別人格(潜在意識下人格)を呼び出し,体験を聴く過程で,治療者は患者のトラウマ体験を追体験します。そして,壺のふたを開き,別人格がつくられた理由を丁寧に聴取します。別人格に対して感謝の意を伝え,心理的サポートを保証し,同意が得られた場合に主人格との統合を行います。人格の統合を終えた患者さんには,その場で明らかな改善がみられます。その意味で,USPTは,短期療法としての要素を持ち合わせていると言えるでしょう。

 となると,「どうしてそんなに有効なメソッドが,ほとんど世の中に認知されず,広まっていないのだろう?(本当は効果がないからでは?)」という至極当然な疑問が湧きあがるでしょう。

メーリングリストや研修会への参加で,理解を深めてください

 なぜか? 少し考えてみてください。キャラハンのTFT(思考場療法)が,どれほど効果的なメソッドであろうとも,薬物療法やCBT(認知行動療法)ほどには世に浸透していません。問題解決技法,セルフアイデンティティー・スルー・ホ・オポノポノにしても,同様です。世間一般の常識から外れたアプローチ法は,受け入れられづらいものです。

 また,USPTを行っていくと,遅かれ早かれ,憑依現象に当たるときが訪れます。ゆえに,USPTを初学者に解説するときには,憑依に関する説明もするのが一般的なのですが,憑依のくだりを説明するだけで,USPT全体に拒絶反応を示す治療者が一定数いるのが現状です。
 これは,とても残念な状況です。なぜなら,憑依が,真に霊や狐憑きによるものなのか,暗示によるのかはともかく,DSM-5における解離性同一性障害の診断基準A項には,「2つまたはそれ以上の,他とはっきりと区別されるパーソナリティ状態によって特徴づけられた同一性の破綻で,文化によっては憑依体験と記述されうる」と明確に記載されています。またコリン・A・ロスは研究で,半数以上の解離性同一性障害患者が「憑依されたという感覚」を訴えたというデータを示しています。祈祷性精神病という概念を提唱する森田正馬の言説も併せて考えるに,憑依という現象自体を治療者が否認するのは,決して治療的な態度とはいえないでしょう。
 ※ USPT研究会としての,憑依のとらえ方の一案は,USPT研究会ブログの記事をご参照ください。

 …そのような理由により,USPTは未だメジャーな治療にはなっていませんが,熱意のある治療者にとっては,非常に強力な治療法となりえます。
 USPTの手技は,クライエント自らが個人的に実践できるTFT(思考場療法)やセルフアイデンティティー・スルー・ホ・オポノポノなどとは違い,技法を習得した治療者がクライエントに施術するものです。ゆえに,不特定多数の人が閲覧することを前提としたWeb上ですべて公開することは難しいので,USPTに関心のある方は,これらの文献を参照されるか,メーリングリストにご登録ください。

 ぜひ,あなたのいちばんクリティカルな眼差しでUSPTを,批評してください。メーリングリストや研修会での実演に向けられる,熱き眼差しこそが,解離性障害,トラウマ関連障害,遷延する気分障害や不安障害など精神疾患の治療への,一筋の光明となるはずです。


2016年1月
USPT研究会
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