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症例X

早稲田通り心のクリニック院長・小栗康平による,USPTの入門書。間口は広く,内容は奥深いと評判です。USPT開発の経緯,憑依霊と精神医学との関係,内在性解離(潜在意識下人格)の理論解説,豊富な症例呈示による人格統合の過程,USPTによる過去世療法・未来世療法など,内容は多岐にわたっています。

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2016年2月のアーカイブ (記事3件)

治療施設の地図一括表示

 USPT研究会 公式ホームページ 「USPT治療施設・治療者リスト」のページを更新しました。


 このように,1枚の地図に,USPTによる治療を手がける施設が一括表示されるようになりました。もちろん,リスト(一覧表)も継続して掲載しています。
 ※ 各施設の診療内容をお問い合わせの上,詳細をご確認してから受診するようにしてください。

「憑依」と「解離性障害」

 「憑依」をテーマにすると,どうしても,うさん臭く思われてしまう可能性が高いので,正直なところ,あえて触れずに別のテーマで記事を書くほうが無難でしょう。しかし,あえて早い段階で「憑依」についてUSPT研究会の見解を示すことにしました。
 憑依=オカルトという印象を持つ人は多いことでしょう。そんな人に,クイズです。

 Q) 米国の精神疾患診断マニュアルであるDSM-5の「解離性同一症/解離性同一性障害」(いわゆる多重人格)の項には,「憑依」という単語が何回用いられているでしょう?

 A) 正解は,12回(憑依possession 11回,憑依するpossessing 1回)です。
 このことは,「憑依=オカルト」だとステレオタイプに決めつける思考こそがカルトであることを物語ります。

DSM-5診断マニュアルにおける「憑依」の位置づけ

 DSM-IV-TRで特定不能の解離性障害(DDNOS)に分類されていた憑依体験(憑依トランス)は,上述のDSM-5においては解離性同一性障害(以後,DID)の中に分類されるようになりました。DSM-5中の憑依に関する記載について,詳しく見ていきましょう。

・ DSM-5中では,憑依という現象が科学的に一定程度の妥当性を持つかどうかについて言及はありませんが,世界の多くの地域で浸透している概念だという前提のもとに,記載がすすめられています。
・ DSM-5によれば,憑依(possession)の全てが,DIDである訳ではありません。世界各地で見られる憑依体験のうち,大多数は正常なものであり,病ではなく,霊的慣習の一部とみなされます。
・ DSM-5によれば,憑依体験の一部(文化的に許容されず,望まれない不随意性のものであり,臨床的に意味のある苦痛や障害がある憑依)だけが,憑依型解離性同一性障害(Possession-Form Dissociative Identity Disorder)と診断されます。
憑依型DIDの例として,霊魂や,超自然的存在,悪魔や神によるのっとりなどが,DSM-5に記載されています。憑依型DIDは,同一化の破綻が顕在化しにくい非憑依型DIDに比して,交代する同一性の出現が非常に顕在的となります。

 原著の英語版には「as if」の文脈で記された部分もあるものの,少なくとも憑依をただのファンタジーだと切り捨てないDSMの姿勢は,大きく評価されるべきしょう。

USPTにおける「憑依」の位置づけ

 しかしながら,USPTにおける憑依の扱いかたは,DSM-5とは異なります。USPTでは通常,「憑依は,解離性障害とは別の現象である」と考えます。

 USPT中に出現する憑依霊は,悪魔・天狗・地球外生命体などである場合は稀です。もし出現したとしても,治療者を騙そうとする人間霊が「悪魔」を名乗っている場合がほとんどです。不慮の死をとげた人間霊や,ネガティブなエネルギーとしての生き霊が憑依している場合,それらの霊は,USPTを施行しても,主人格には決して統合できません(もともと1つだったクライエントの心が分かれた人格「部分」ではなく,あくまで外部から憑依したものなので)。

 実臨床では,憑依霊と解離人格部分の見分けがつきづらい場合も多く,その意味では,DIDを憑依型DIDと非憑依型DIDに分類するDSM-5の診断基準にも一定の理はあります。
 ただそれは,あくまで診断類型上の捉え方であり,前者(憑依霊)と後者(同一性の破綻による人格部分)では,対処法が異なるので,技法と経験が必要となってきます。実際には,人格部分が解離しやすい人ほど,憑依されやすい性質でもあるため,憑依霊と人格部分が1人のクライエント内に共存するケースも多いですが,その場合,対憑依霊と対人格部分とで,それぞれ別のアプローチを行います。

内在性解離とは

 心が折れそうな衝撃的な体験やストレスを感じると,そのつど,無意識のうちに「もうひとりの自分」をつくり出す人がいるのではないか。私はそう推論しました。解離した「もうひとりの自分」に,つらいことや悲しいことを背負ってもらい,自分はそこから逃避するのです。
 こうして,いわば「内なる別人格」を潜在意識の中に何人でもつくり出してしまう。つらいことに耐える自分,悲しみを請け負う自分,がんばる自分,いい子でいる自分,怒りを背負った自分......。それが「内在性解離」です。
―『症例X』(小栗康平著) より引用
 小栗は,上記のように「内在性解離」を説明しています。「内在性解離」は,トップページで説明した「潜在意識下人格」,あるいは「壺に閉じ込められた 辛い記憶・感覚・感情のかたまり」とほぼ同じものを表した概念です。
 「内在性解離」は,アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-IV-TRDSM-5では,それぞれ,解離性障害カテゴリの中の,以下の診断にあてはまる場合が一般的です。
 DSM-IV-TRでは,
 DDNOS (300.15 : 特定不能の解離性障害 Dissociative Disorder Not Otherwise Specified)の「1.臨床状態が解離性同一性障害に酷似しているが,その疾患の基準全てを満たさないもの。例としてはa)2つ又はそれ以上の、はっきりと他と区別される人格状態が存在していない。またはb)重要な個人的情報に関する健忘が生じていない。」
 DSM-5では,
 OSDD(300.15 : 他の特定される解離症/解離性障害 Other Specified Dissociative Disorder)の「1.混合性解離症の慢性および反復性症候群:この分類には,自己感覚と意志作用感における目立つほどではない不連続性と関連する同一性の障害,または解離性健忘がないと報告する人における同一性の変化または憑依のエピソードが含まれる。」
 DSM-IV-TRからDSM-5にかけて診断基準が変更された意義については,この場では触れません(詳しくは,【外部リンク】岡野憲一郎のブログを参照)。ここで言いたいのは,小栗が提唱する「内在性解離」は,DSMにおいても収まる場所があり,決して少数の医師による独善的な理論ではないということです。
 フランク・W・パトナムが,著書『解離』(中井久夫訳)の中で以下のように述べていることからも,解離性障害の治療に真摯に取り組む医療者にとっては,「内在性解離」(と小栗が命名した病態)は,共通認識となっているものであると言えましょう。
 DDNOSを治療する臨床家は,多くは多重人格性障害だが交代人格状態が外に現れていないものと記述するのではないかと思う。DDNOS患者は,しばしば内面が分割されているという主観的な感じが強烈にあると語る。
―『解離』(Frank W. Putnam著,中井久夫訳) より引用
 同書の訳者あとがきで,中井久夫は,「著者(=パトナムのこと)は天文学でいえば星雲ばかりでなく目に見えない暗黒星雲を見ることのできる人であって,この領域(=解離性障害の領域)で今後始められるべき空白がいかに多いかを,くどいほど各所で力説している」と記しています。解離性障害の治療という領域の発展のため,その空白を埋めるべく努力をする医師が,1人,また1人と増えていくことを願います。
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