質問者 「USPTによる治療について説明すると,たちまち拒絶反応を示す人も少なくないと思うんです。憑依霊の話とか過去世・未来世の話はもちろんのこと,たとえそれらに関する誤解がとけたとしても,『タッピングで潜在意識下の人格を呼び出す』っていう点自体に,ある種のうさん臭さを感じる人が多いと思うのですが?」
回答者 「はい。USPTは,うさん臭いですよ(笑)」
質問者 「えっ??(笑)」
回答者 「ですが,うさん臭くない心理療法ってものがあったとして,果たしてそんなものは効果があるのでしょうか?あるいは,心理療法と呼べるのでしょうか?」
質問者 「と,言いますと?」
回答者 「それは,人間存在そのものが,うさん臭いものだからです。河合隼雄先生もそう書いてます。ならば,そもそもうさん臭い人間存在に,無機質な杓子定規を当てはめようとしても,あまり益はないと考えるのが自然ですよね。ギリシャ神話も,日本神話も,ユング心理学も,黒澤映画も,藤子不二雄の漫画も,量子論も...。その波長が人間の心を揺さぶるものは,少なからず,うさん臭い要素を含んでいます。また,解離性同一性障害(多重人格)とは,うさん臭い外界を単一のものと思い込むために,自分自身をうさん臭く切り分けていく,悲痛な病だとも言えるでしょう。ですから,解離性障害の治療法は,うさん臭くあるべきあり,『USPTがうさん臭い』という意見は,私はむしろ最大級の褒め言葉だと思っています」
(回答者 : 本庄児玉病院 外来医長 新谷宏伸)
【補足】 ちなみに河合隼雄先生は,誤解を招きやすく,無用な攻撃にさらされやすい(=うさん臭すぎる),「シンクロニシティ(共時性)」というような概念については,第1作「ユング心理学入門」では意図的に軽く触れる程度にとどめています。ユング心理学と,USPTは,ともにうさん臭いという意味で似ていると考えれば,今後のUSPTの普及を考えた場合,一般に広く伝えるべき内容と,細心の注意を払って伝えるべき内容を,分けていく必要があると思われます。