追悼 安克昌先生
2000年12月2日。16年前の本日,1人の卓越した精神科医が,若くしてこの世を去りました。安克昌(あん かつまさ)先生,享年39歳。
1995年,神戸大学精神科の医局長だった安先生は,阪神・淡路大震災発生直後から,被災地での活動に着手しました。そして,震災の混乱が落ち着いたあとは,いっそう解離性同一性障害の治療に情熱を注ぐようになりました。彼の功績が今も語り継がれるのは,心的外傷を抱えた患者たちに対し,綺麗事だけではすまない,泥まみれの臨床を実践し続けたからです。彼の存在なくして,わが国の解離性障害の臨床を語ることはできません。
安先生と中井久夫先生が,互いに精神科医として袖振りあった期間が16年間。そして,肝臓がんで安先生が亡くなったあと,それと同じだけの年月が経ちました。安克昌先生は,永遠に若い。あまりにも,いつまでも,若いままです。現時点でさえ,USPT理事の誰よりも若い。若くして彼の成し遂げたことの多さに思いを馳せるほど,彼がもし今も...という念を捨て去ることは難しくなります。。
しかしながら,今日を生きる私たちの手元には,安先生が残してくれた臨床知があります。それをもとに,解離臨床を更なる次元へと高めていくことも,USPT研究会の役割であると考えています。